老後2000万円問題を受けて、改めて読む「LIFE SHIFT」 人生100年時代に対する4つの備えとは?

100年ライフ
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 記事作成者撮影

金融庁による報告書で老後に年金収入のみで貯金を取り崩しながら20~30年生活する場合、1300~2000万円が必要であることが指摘されました。

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この報告書を受けて、「100年安心の年金システムは破綻した」というSNS上での意見や渋谷での#年金返せデモなどに発展しました。

現在の日本の年金システムは賦課方式(現役世代が引退世代の年金を支払うシステム)を採用しており、少子高齢化が進めばシステムが破綻することは以前から予想されていました。

政府は今後、年金の支給開始年齢を上げたり、支給額を減らしたりして年金システムを破綻させないようにすると考えられますが、長寿化と少子高齢化に関する問題は何も社会保障制度だけではありません。

本記事ではリンダ・グラットン (著)の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』を改めて読み解くことによって、100年時代を生き抜くために個人がするべき4つのことを示します。

年金問題は100年時代の問題の1つに過ぎない

長寿化によってもたらされるのは賦課方式の年金システムの破綻だけでなく、 教育→労働→引退といった従来の3ステージ型の人生の崩壊を意味します。

従来であれば大学卒業までにその後の労働期間に必要な知識を取得することができました。しかし、現在ではテクノロジーの発展とグローバル化によって知識の陳腐化が加速しています。さらに長寿化によって労働期間そのものが長くなる100年時代においては、若い頃に受けた教育だけで自分の市場価値を維持することが難しくなります。したがって、労働期間に知識や人間関係などの資産に再投資をする期間が必要となります。

つまり備えは老後のための資金だけでなく、労働期間中の知識や人間関係といった無形資産にも必要です。

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』の主張

ここからは『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』でのリンダ・グラットン教授の主張を読み解きながら、長寿化によって時代にどのような変化がもたらされるかを解説していきます。

平均寿命が伸びる

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現在、平均寿命は10年に2年のペースで伸びています。

このままのペースで平均寿命が伸びるとすると、20歳の人は100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が50%以上あります。

寿命が伸びることによって一生のうちに出来ることが増えますが、一方で確かな備えが無ければ、無為に長い人生を過ごすことになりかねません。

人生は「不快で残酷で短い」という、17世紀の政治思想家トーマス・ホッブズの言葉は有名だ。これよりひどい人生は1つしかない。不快で残酷で長い人生である。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 21ページ

3ステージ型人生の崩壊

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100年時代ではこれまでの教育→労働→引退という3ステージ型のモデルが崩壊します。なぜなら、長寿化によってこれまでの年金システムでは老後の生活費を賄うことが難しくなるためです。

LIFE SHIFTではジャック、ジミー、ジェーンの3人の人物を登場させ、年齢によって平均寿命の増加が資金計画にどのように影響を与えるのか示されています。

例えば1945年生まれのジャックはこれまでの3ステージ型の人生を歩むことができます。彼が70歳まで生きたとすると、 毎年所得の4.3%を貯蓄することで、老後の8年間を暮らせます。

一方、1971年生まれのジミーは現在48歳、85歳でこの世を去るとすると、 20年の引退生活を送るには、毎年所得の17.2%を貯蓄する必要があります。問題は毎年所得の17.2%の貯蓄は例え1年であっても達成が難しいことです。そこで引退する年齢を75歳くらいまで引き上げることで、 貯蓄の割合を毎年所得の10%以下まで抑えることができます。

さらに、1998年生まれのジェーンは現在21歳、100歳でこの世を去るとすると、 44年の引退生活を送るには、毎年所得の25%を貯蓄する必要があります。この貯蓄率を実現することが不可能なのは目に見えています。

このように若ければ若いほど長寿化の影響を受けやすく、これまでの資金計画が通用しなくなっていくことが示されています。

雇用の変化

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100年時代は、機械化・AIによって産業が空洞化する一方で、 新たな産業やエコシステムが登場すると指摘されています。例えば機械によって自動化されやすいルーティーンワーク(オフィスの事務や機械操作)などの仕事は無くなっていくことが予想されます。一方で、介護などの複雑な身体的動作が必要な職業や技術職や専門職、管理職などの広範囲に専門的な知識が必要とされる職業は今後も残り続けると予想されています。

100年時代を生きる人々は、創造性、共感、問題解決能力を必要とされるような、できるだけロボットや人工知能に代替されにくい職業を目指す必要があります。

無形資産の重要性

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100年時代において重要なのはお金や土地などの有形資産だけではありません。LIFE SHIFTでは知識や人脈、健康などを無形資産と定義し、これらの無形資産と有形資産のバランスを取ることを推奨しています。無形資産には次の3つがあります。

  1. 生産性資産
  2. 活力資産
  3. 変身資産

生産性資産は人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ資産です。例えばスキルや知識、高度なスキル、モチベーションを高めてくれる仲間、自分の能力に対する評判などが生産性資産です。

活力資産は肉体的・精神的な健康と幸福のことです。健康的な習慣、バランスの取れた食生活、友人関係、などがこれに当たります。

変身資産は時代の変化に合わせて自身を変革するために必要な資産です。例えば自分についての知識が変身資産に当たります。自分が何を求めていて、何が得意で、何が好きなのかを知っていることは、自分がどの方向に進むべきかを示す道標になります。また多様性に富んだ人脈も変身資産です。いざ、向かいたい方向が分かった時に様々な人脈を持っていることはその方向に進む助けになります。

こうした無形資産に継続的に投資していくことで、生産性を高く保ち、 長く健康でいられ、変化に柔軟に対応できるようになります。

100年時代の新たなるステージ

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100年時代には3つの新たなステージが選択肢にあがります。

  1. エクスプローラー
  2. インディペンデント・プロデューサー
  3. ポートフォリオ・ワーカー

エクスプローラーは自分のアイデンティティを探す旅をする人たちのことです。

エクスプローラーは、周囲の世界を探査し、そこになにがあり、その世界がどのように動いているか、そして自分がなにをすることを好み、なにが得意かを発見していく。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 231ページ

エクスプローラーでの経験が自らのアイデンティティを自覚し、変化の激しい時代でのブレない軸を作ることになります。

インディペンデント・プロデューサーは職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人です。インディペンデント・プロデューサーは試行錯誤を繰り返すことで、 ビジネスにおいて何が有効で何が無効かを確かめていきます。単純な起業家と違い、永続的なビジネスを構築するよりも、短期的に様々なビジネスを試していくことになります。

ポートフォリオ・ワーカーは異なる種類、異なる目的の活動を同時に行います。例えば所得を得るための活動、ボランティア活動、趣味の活動などです。スキルと人脈の土台が確立されていると、それらを活かして、様々な活動に精力的に取り組むことができます。

100年時代に際して変化する要素

kai kalhhによるPixabayからの画像

100年時代に変化するのは寿命や仕事の仕方だけではありません。お金に対する考え方や時間の使い方、人間関係までもが長寿化によって変化していきます。

お金に対する考え方

100年時代を生き抜くには、お金に関して自己効力感と自己主体感を持つことが重要です。自己効力感とは自分ならできるという認識のことで、 自己主体感とは自ら取り組むという認識のことです。

お金に関する自己効力感を持つためには、まずお金に関する知識をつける必要があります。LIFE SHIFTでは簡単なテストでお金に関する知識を確かめられます。

Q1 あなたが銀行に100ドル預けていて、利息は年に2%だとする。預金を引き出さない場合、5年後にはいくらになっているか?

Q2 預金の利息が年に1%で、インフレ率が年に2%だとする。1年後、あなたがその口座のお金で変えるものは増えるか、変わらないか、減るか?

Q3 「一つの企業の株式を購入することは、投資信託を買うより一般的に安全性が高い」この主張は正しいか、間違っているか?

Q4 「15年物の住宅ローンはたいてい、30年物の住宅ローンに比べて月々の返済額は多いが、返済する利息の総額は少なくて済む」この主張は正しいか、間違っているか?

Q5 金利が上昇したとき、債権の価格はどう変動するか?

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 274ページ

時間の使い方

100年時代では余暇の時間をレクリエーション(娯楽)に費やすのではなく、 リ・クリエーション(再創造)の時間に当てていく必要があります。余暇の時間を自分の無形資産の構築に当てることで、より高スキルで高収入の職に就くことができ、結果的に有形資産の構築の役に立ちます。

人間関係

100年時代においては結婚や家庭のあり方も変化していきます。例えば結婚は従来では女性が家庭で家事などを行い、男性が外で仕事をするという形態が一般的でした。最近では女性の社会進出が進んできましたが、未だに女性と男性で就ける職や収入に違いがあるのも事実です。

一方で、100年時代では無形資産に投資する必要があり、収入のない時期をどのように乗り切るかが問題になります。貯蓄を取り崩して生活する方法もありますが、結婚していればお互いに無形資産の投資期間をずらすことによって、収入を保ったまま無形資産へ投資することができます。100年時代は結婚にこうしたリスクの分散という側面を期待する場合が多くなると指摘されています。

我々がするべきこと

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長寿化による以上のような変化に対応するために、我々は既存のシステムや考え方を変更しなければなりません。

教育機関がするべきこと

現在の教育機関が行っている画一的な教育は、変化の激しいこれからの時代には役に立たなくなる可能性があります。20年も教育に投じたのに何の役にも立たない人材ができた、というのではあまりにも社会的損失が大きく、また教育を受けたその人自身も20年という膨大な時間を棒に振ることになります。

LIFE SHIFTでは次のような提案がされています。

長い人生を生きる人たちのニーズに応えるために、教育機関は四つの課題を乗り越えなくてはならない。それは、新しい学習テクノロジーと経験学習を取り入れること、年齢の壁を壊すこと、創造性、独創性、やさしさ、思いやりを教える方法について深く考えること、そして、テクノロジーの進歩に対応するための実践的な専門教育を急速に拡大させることだ。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 366ページ

企業がするべきこと

長寿化に伴い、企業へのニーズも変化していきます。LIFE SHIFTでは6つの提案がされています。

  1. 無形の資産に目を向ける
  2. 移行を支援する
  3. マルチステージの人生を前提にする
  4. 仕事と家庭の関係の変化を理解する
  5. 年齢を基準にするのをやめる
  6. 実験を容認・評価する

どれも容易な変化では無いですが、LIFE SHIFTではこうした変化を実践するためには人事の一大改革が必要であると指摘しています。現在の人事制度は年齢によってある程度、労働者を画一化することによって予測可能性を高めています。これからは不確実性に対処したり、柔軟な働き方のニーズに応えるために人事制度を改める必要があります。

政府がするべきこと

100年時代に政府がなすべきことは、年金などの社会保障制度にまつわる財政問題はもちろんのこと、3ステージ型モデルからの脱却や所得の違いによる寿命格差の問題など多岐にわたります。そしてこうした政策転換をするには民意を問う必要があります。しかし、残念ながら現在の有権者の多くは高齢者であるため、こうした新たなシステムや高齢者に不利になるような政策は掲げづらいという現状があります。

こうした変化をもたらすには私たち一人一人が100年時代と向き合う必要があると指摘しています。

著者たちが思うに、変化の担い手になるのは、企業でもなければ政府でもない。煎じ詰めれば、その担い手は私たちだ。長寿化の試練とチャンスを目の前にして、個人や夫婦、家族、友人グループが実験し、既存のやり方を壊し、それを再構築し、意見を交わし、議論を戦わせ、苛立ちを覚える必要がある。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 396ページ

人生100年時代に向けて個人がするべき4つのこと

人生100年時代に向けて個人がするべき4つのことは以下のとおりです。

  1. お金(有形資産)の貯蓄と投資
  2. 健康(無形資産)の維持や投資
  3. 知識・スキル・経験(無形資産)などの維持や投資
  4. 人間関係(無形資産)の維持や投資

お金(有形資産)の貯蓄と投資

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前述通り、3ステージ型人生の資金計画はすでに破綻しました。デモをしようが何をしようが、無いものは払えないし、返せないということになるでしょう。そのため、私たちは自ら、老後に備えて貯蓄と投資をする必要があります。

私たちはお金に対する知識を身につけ、自分のお金を自分で管理することができるという自己効力感をつける必要があります。さらに、セルフ・コントロール能力を発揮させ、目先の快楽よりも将来的な安定性を優先させるだけの自己主体感も持つ必要があります。

健康(無形資産)の維持や投資

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長い人生を充実させるには健康である必要があります。注意するべきは平均寿命の増加は単なる医療技術の進歩だけでなく、健康的な習慣の啓蒙によってももたらされているということです。つまり健康的な習慣を自分に取り入れて実践していかなければ長寿化の恩恵には与れないということです。

健康といえば、まず思いつくのがダイエットです。ですが、これまで数々のダイエット法を試したのに、結局痩せられないという方も多いのではないでしょうか。私もその1人でした。

私が痩せられたのは旧石器時代の人間の生活を真似るパレオ式ダイエットに出会ったからでした。パレオ式ダイエットを実践して、体重が6.7kg、体脂肪率が6.6%減りました。詳しい方法はこちらの記事に書きました。ぜひ、実践してみて下さい。

知識・スキル・経験(無形資産)などの維持や投資

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これまでは勤労期間が短かったために大学までに受けた教育で十分働くことができましたが、これからは定期的に自分の知識やスキルをアップデートしていく必要があります。必要なら一時的に仕事をやめてでもこうした知識やスキルに投資する必要が出てきます。

さらに、知識やスキルはインターネット上で誰でも手に入るようになるため、より自分の希少性を示し、市場価値を高めるためには、自分自身の経験も重要になっていきます。就職先を選ぶ際も、単なる目先の収入よりも、その仕事を通じてどのような経験ができるのかが重要視されるようになっていくと予想されます。

人間関係(無形資産)の維持や投資

Gordon JohnsonによるPixabayからの画像

人生をより充実させるためにも、人間関係は重要です。心理学者も孤独は喫煙と同じくらい健康リスクがあると指摘しています。良好な友人関係は精神の安定性に直結します。

また自分が新たなチャレンジをしたい時にも人脈は手助けしてくれる場合が多いでしょう。より多様な人脈を作ることを心がけ、新しい人、自分とは異なる考え方の人にも寛容な態度を示すことが必要になります。

当ブログでは人生100年時代を生き抜くために必要な知識や考え方などを発信していきます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

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